ただ凍らせているわけじゃない。魚、野菜、加工食品ごとに違う冷凍技術を探る。

冷凍技術が描く、私たちの食の未来
日々の暮らしの中で、冷凍食品はもはやなくてはならない存在です。
特に忙しい毎日を送る私たちにとって、温めるだけ、揚げるだけで本格的な食事が楽しめる冷凍食品は、まさに心強い味方です。
しかし、「ただ凍らせているだけ」では、あの美味しさは実現できません。
そこには、食材の特性を最大限に活かすために、細やかに進化してきた冷凍技術の秘密が隠されています。
仕事帰りのご褒美、冷凍コロッケから
ある日の夜、仕事から疲れて帰宅した私。冷蔵庫を開けると、そこには先日買い置きしておいた冷凍コロッケが眠っていました。
「よし、今日はこいつを揚げて、サクサクの揚げたてを味わおう。」
そう心に決め、私は迷うことなく、凍ったままのコロッケを熱した油に投入します。
テレビで見た知識が頭をよぎります。
「冷凍コロッケは解凍せずに揚げるのがコツ。解凍すると水分が出て油がはねるし、食感も悪くなる。」
その通りでした。冷凍された状態から一気に揚げることで、水分が急激に蒸発し、衣が驚くほどサクサクに仕上がるのです。
温度管理にも細心の注意を払いました。揚げ物には欠かせない、約180℃の油の温度。
この温度が低すぎると、コロッケは油を吸ってべたついてしまい、高すぎると外側だけが焦げて中まで火が通らないままになってしまいます。
完璧な温度で揚げることで、外は黄金色に輝き、中はホクホクとした理想的な状態に仕上がります。
揚げ終えたコロッケは、キッチンペーパーの上で余分な油をしっかりと切ります。
そうして完成したコロッケを口に運んだ瞬間、その完璧なサクサク感と、中のジャガイモの優しい甘みが口いっぱいに広がりました。
「冷凍食品なのに、こんなに美味しいとは!」
この感動は、日々の生活に欠かせない、小さな幸せを運んでくれます。
食材に合わせて使い分けられる、奥深い冷凍技術
この冷凍コロッケの美味しさの背景には、食品ごとに最適な方法で冷凍を行う、高度な技術の進化があります。
冷凍技術は、大きく分けて生鮮食品、野菜、加工食品の3つのカテゴリーに分類され、それぞれに特化したアプローチが取られています。
生鮮食品:鮮度を閉じ込める超低温冷凍
マグロのような高級魚介類では、超低温冷凍という技術が使われます。この技術では、マイナス60℃以下の極低温で急速に冷凍します。
これにより、細胞内の水分が氷の結晶に変わる過程で、細胞膜が破壊されるのを最小限に抑えることができます。
魚は、獲れたての鮮度を保つために、漁獲後すぐに船上で冷凍されることも多く、これにより流通の過程で品質が落ちることなく、私たちの食卓まで届けられるのです。
同じ魚でも、丸ごと冷凍する場合と切り身にする場合では、冷凍方法が異なります。
丸ごとの魚は、冷凍に時間がかかり、均一に冷やすのが難しいですが、
切り身はブラストフリーズやIQF(Individual Quick Freezing)といった急速冷凍技術が用いられ、一つひとつを素早く凍らせることで、高品質を維持します。
野菜:色と風味を守るブランチング
野菜を冷凍する場合、ブランチングと呼ばれる特殊な処理が不可欠です。
これは、冷凍する前に野菜を短時間湯通しすることで、野菜がもともと持っている酵素の働きを止め、冷凍中に色や風味、栄養が失われるのを防ぐ技術です。
この処理に加えて急速冷凍を行うことで、野菜の水分が大きな氷の結晶になるのを防ぎます。
これにより、解凍後もシャキシャキとした食感が保たれ、まるで採れたてのような新鮮さを味わうことができます。
加工食品:手軽さと美味しさを両立させる技術
そして、私が感動したコロッケのような加工食品には、ブラストフリーズやIQF技術が多用されています。
これらの技術は、調理済みの食品を短時間で一気に凍結させることで、品質の劣化を防ぎ、解凍後もほぼ同じ美味しさを再現します。
特にIQFは「個別の急速冷凍」を意味し、コロッケ一つひとつがくっつくことなくバラバラの状態で冷凍されるため、
必要な分だけ取り出して調理できるという、私たち消費者にとっての大きな利便性ももたらしてくれます。
この技術がなければ、冷凍庫のコロッケは大きな氷の塊になってしまい、あらかじめ食べる分だけ解凍しておく、という不便な状態になっていたでしょう。
さらなる進化を続ける最新の冷凍技術
冷凍技術は日々進化しており、近年では特殊冷凍技術と呼ばれる、より高度な方法が注目されています。
特殊冷凍技術:プロトン凍結、3Dフリーザー、CAS凍結
- プロトン凍結: 磁力と電磁波、冷風を組み合わせ、食品中の水分をより微細な氷の結晶にすることで、細胞の破壊を最小限に抑える技術です。これにより、魚介類や肉類を、解凍後もドリップ(うま味成分を含んだ水分)が流れ出ることなく、限りなく生の食感に近づけることが可能になりました。まるで獲れたて、絞めたてのような新鮮さを、遠く離れた場所でも楽しめるようになったのです。
- 3Dフリーザー: 高湿度の冷気を立体的に循環させることで、食材の表面だけでなく、内部まで均一に冷やす技術です。冷凍ムラがなくなるため、冷凍焼けを防ぎ、食材本来の風味や色合いを保ちます。乾燥を防ぐ効果も高く、特にデリケートな食材の品質保持に適しています。
- CAS(Cells Alive System)凍結: 磁場の中で過冷却状態を作り出し、水分がゆっくりと均一に氷の結晶になるように制御する技術です。細胞を壊さず、解凍後のドリップを大幅に減らすことができます。この技術により、これまで冷凍が難しいとされていた高級食材や、繊細な調理パンなども、出来立てに近い状態で冷凍保存できるようになりました。
家庭でもできる、賢い冷凍保存のコツ
これらのプロの技術から、私たちも家庭で冷凍保存をする際のヒントを得ることができます。大切なのは「いかに素早く凍らせるか」です。
- 小分け・薄く平らに: 食材は使う分量ごとに小分けにし、ラップで包んで薄く平らにしてから冷凍保存袋に入れます。表面積が広くなることで、熱伝導が良くなり、急速に凍らせることが可能です。
- 金属トレーを活用: 熱伝導率の高いアルミやステンレス製のバットにのせて冷凍庫に入れると、食材の熱を素早く奪い、短時間で凍結させることができます。
- 家庭用冷凍庫の工夫: 自宅の冷凍庫に急速冷凍機能があれば活用しましょう。また、冷気がうまく循環するように、食材を詰め込みすぎないことも大切です。
特に野菜の冷凍保存に関しては、下ごしらえのひと手間を加えることで、保存の便利さが格段に上がります。カットした野菜を軽く湯通しする「ブランチング」は、家庭でもできる簡単なテクニックです。これにより、冷凍による色や食感の変化を防ぎ、いつでも新鮮な状態で料理に活用できます。
野菜の冷凍保存について、もっと詳しく学びたい方には、料理研究家の島本美由紀さんの書籍『野菜まるごと冷凍テクニック [ 島本美由紀 ]』をおすすめします。
この本では、野菜の特性に応じた最適な冷凍方法が、初心者にもわかりやすく丁寧に解説されています。
賢く冷凍保存することで、食材を無駄にせず、日々の料理がもっと楽に、豊かになることでしょう。
冷凍技術がもたらす、豊かで持続可能な食の未来
冷凍技術の進化は、私たちの食生活に革命をもたらしました。忙しい現代人にとって、時間を節約しながらも、美味しく、栄養バランスの取れた食事を簡単に楽しめるようになったのです。
さらに、冷凍食品は食品ロス削減にも大きく貢献しています。食材を長期保存できることで、無駄を減らし、持続可能な社会の実現にも一役買っているのです。
冷凍技術が支える食卓は、今後ますます多様化し、私たちにさらなる選択肢を与えてくれるでしょう。
今日もまた、仕事から帰宅した私は、次は何を冷凍食品で楽しもうかと思いを巡らせます。冷凍餃子もいいかもしれません。
進化し続ける冷凍技術のおかげで、私たちの食生活は、より美味しく、より便利に、そしてより豊かになっています。
冷凍とんかつの美味しい揚げ方♪
by poohxpooh

材料(2人分)
冷凍とんかつ / 2枚
揚げ油 / 適量
レシピを考えた人のコメント
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