
映画『めがね』を巡る、ゆるやかな時間の旅
癒しと自由が織りなすスローライフの魅力
春まだ浅い頃の海辺の鄙びた村に、どこか不穏な気配が漂います。
プロペラ機から降り立った眼鏡をかけた女性が、小さなバッグを手に、そこにいるカップルに敬礼しながら
浜辺を下っていく光景は、映画『めがね』の始まりを印象的に彩っています。
なだらかな波が寄せては返す静かな浜辺。さらに、同じ飛行機からもう一人の女性が降りてくる、
その導入部分から、都会の喧騒とはかけ離れた、特別な時間が流れ始める予感がします。
この映画を鑑賞した時、私はとても心が安らぎました。
まるで、好きな時に寝て、好きな時に起き、好きなものを食べて良いのだと、心の奥底から許されたような感覚に包まれたのです。
もし叶うのなら、与論島で寝転がり、そよ風に吹かれながら、キラキラと輝く海や砂浜を眺め、冷たいビールを味わう。
そんな夢のような時間が、頭の中に広がりました。日々の生活に追われ、
とかく几帳面になりがちな方ほど、この映画が描く展望に強く魅了されるのではないでしょうか。
劇中に登場するサクラという人物は、ある意味で世捨て人、あるいは地球外生命体、もしくは未来から来た存在のようにも感じられます。
彼女は、人々が偏見を持たずに、ただ感性だけで生きることを手助けし、精神の実質を導く存在として描かれています。
現代社会の金融システムは将来的に崩壊する運命にあると主張する彼女の言葉は、既存の価値観に一石を投じるかのようです。
人生の小休止を求めて南の海辺の町を訪れたタエコは、不思議な一軒宿「ハマダ」に宿泊します。
しかし、観光する場所も何もない小さな浜辺の町で、マイペースすぎる住人たちに
翻弄されるタエコは、ついには耐えかねてハマダを出て行ってしまいます。
フィンランドの日本食堂を舞台に、スローライフな日常を描いて話題となった
「かもめ食堂」の荻上直子監督と主演の小林聡美さんが、今度は南の海辺を舞台に、
人生を見つめ直す人々をゆるやかに描いています。
この映画が、都会人のスローライフ願望に応えようとする意図がなかったと言えば、それは嘘になるでしょう。
現実から逃れてきた「訳あり」の主人公は、携帯電話の電波も届かない南の島で、美味しい食べ物と、
希薄な人間関係の中で、ただひたすらに時を過ごします。
前作以上に劇的な要素は影を潜め、時や感情がまるで凪のように止まっている瞬間すらあります。
干渉されぬ場所こそがユートピア。そんな消極的な理想を抱くキャラクターは、まさに現代の私たちの姿を映し出しているかのようです。
しかし、それをそのままデッサンしたかのような演出には、物足りなさを感じる部分もあります。
物語ることをやめるのであれば、せめて登場人物たちに、もっと豊かな奥行きを持たせるべきだったのかもしれません。
しかし、この余白だらけの時間と空間には、確かに捨てがたい不思議な魅力が宿っています。
ふと、「豊かな自然=癒し」という図式に、疑念を抱き始める瞬間もありました。
ロケ地となった与論島。奄美諸島や、さらに南に位置する沖縄の時空を遡り、本土の都合で征服され、
そして放棄されてきた歴史に、思いを馳せてしまいます。
繰り返す白い波は、悲惨な過去を洗い流しているかのようにも見えますが、
本作が寡黙すぎるがゆえに、鑑賞者自身が自然と思い巡らせてしまうのです。
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『めがね』が誘う、心安らぐ時間と食の楽しみ
『めがね』という映画は、単なる物語の展開にとどまらず、観る者に様々なことを考えさせ、そして何よりも心の癒しを与えてくれます。
特に印象的なのは、登場人物たちが過ごす、ゆるやかで自由な時間です。
時間に縛られず、自分のペースで日々を過ごす彼らの姿は、現代社会に生きる私たちが忘れかけている、大切な何かを思い出させてくれます。
目覚まし時計に急かされることもなく、満員電車に揺られることもなく、ただ自然のリズムに身を委ねる生活。
それが、どれほど心穏やかな時間をもたらすか、この映画は静かに教えてくれます。
劇中では、都会の価値観とは異なる、独自の時間の流れがあります。
朝起きて、海岸を散歩し、皆で朝食を囲む。午後はそれぞれが思い思いの時間を過ごし、夕方にはまた集まって夕食の準備をする。
このシンプルでありながらも豊かな繰り返しが、観る者の心に安らぎを与えます。
特に、小林聡美さん演じるタエコが、最初は戸惑いながらも、次第にその緩やかな時間の中に溶け込んでいく過程は、多くの共感を呼びます。

また、この映画は人間関係についても深く問いかけています。
最初はぎこちなかったり、一見すると希薄に見えたりする関係性も、時間を共有する中でゆっくりと変化していきます。
干渉しすぎず、しかし互いに寄り添うような距離感は、現代人が求める理想的な人間関係のあり方を示唆しているようにも思えます。
南の島という隔絶された空間だからこそ育まれる、特別な絆がそこには存在します。
映画『めがね』を彩る飲み物と食べ物
『めがね』を語る上で欠かせないのが、作中に登場する飲み物や食べ物です。
どれもこれも、素朴でありながら、五感を刺激し、心の豊かさを感じさせるものばかりです。
豪華な料理ではなく、素材の味を活かしたシンプルな食事が、この映画の世界観をより一層深めています。
かき氷
まず思い浮かぶのは、やはりかき氷でしょう。サクラさんが作る、手回しのかき氷機で作られたかき氷は、
シンプルながらもひんやりとした口当たりで、夏ビーチの暑さを和らげてくれます。
真っ白な氷に、鮮やかなシロップがかけられたかき氷は、見ているだけでも涼しげで、夏の到来を感じさせます。
都会の喧騒を忘れ、ただ静かにかき氷を味わう時間は、まさに贅沢そのものです。
朝食の魚と味噌汁
ハマダでの朝食は、毎日同じような献立です。焼いた魚と、温かい味噌汁。
そして、炊きたてのご飯。シンプルながらも、とれたての新鮮な魚と、
丁寧に作られた味噌汁は、体に染み渡るような美味しさです。
この何気ない朝食の風景が、日々の営みの尊さ、そして食の癒しを私たちに伝えてくれます。
特に、皆で食卓を囲み、無言で食事をするシーンは、言葉以上のコミュニケーションがあることを示唆しているようにも感じられます。
ビールと焼酎
そして、やはりお酒も重要な要素です。暑い南の島で、昼間から飲む冷たいビールは格別です。
また、地元でとれた素材を使った焼酎も登場し、南の島の空気感を一層引き立てています。
夜、縁側で海風に吹かれながら、ゆっくりとお酒を嗜む時間は、大人のためのリフレッシュタイムです。
劇中の登場人物たちが、それぞれ好きな飲み物を片手に、ゆるやかに過ごす時間は、観る者にも同じような安らぎを与えてくれます。
自家製の梅干し
作中では、手作りの梅干しも登場します。手間暇かけて作られた梅干しは、
まさに日本の食文化の象徴であり、昔ながらの生活の豊かさを感じさせます。
すっぱくて塩辛い梅干しが、疲れた体に染み渡る。そんな情景が目に浮かびます。
これらの飲み物や食べ物は、単に空腹を満たすためだけのものではありません。
そこには、人々の生活、文化、そして心の交流が凝縮されています。
スローライフを志向する人々にとって、『めがね』に登場する食事風景は、憧れそのものと言えるでしょう。
『めがね』が問いかける「豊かな自然=癒し」の図式
この映画のロケ地は、鹿児島県の与論島です。美しい海と白い砂浜が広がる与論島は、
一見すると「豊かな自然=癒し」という図式がそのまま当てはまる場所に見えます。
しかし、映画を観ていると、時にその図式に疑問を抱かされることがあります。
奄美諸島やさらに南の沖縄には、本土の都合によって征服され、そして放棄されてきた悲惨な歴史が存在します。
繰り返す白い波は、そうした過去を洗い流しているかのようにも見えますが、
この映画が寡黙であるがゆえに、観る者は自然とそうした歴史に思いを巡らせてしまうのです。
美しい風景の裏側にある歴史的背景を、あえて言葉少なに描くことで、観客に深く考えさせる余地を与えています。
『めがね』は、単なる観光地のプロモーション映画ではありません。
むしろ、南の島での生活を通して、現代社会のあり方、人間の本質、そして真の豊かさとは何かを問いかけています。
都会の喧騒から逃れてきた主人公が、携帯電話もつながらない場所で、ゆっくりと自分自身と向き合う時間。
それは、私たち一人ひとりが、日々の生活の中で見失いがちな大切な問いかけでもあるのです。
この映画は、観客に対して明確な答えを与えることはありません。
しかし、その余白こそが、観る者に様々な解釈や思考を促し、映画体験をより豊かなものにしていると言えるでしょう。
荻上直子監督の独特な世界観が、存分に発揮された作品です。
なぜ今、『めがね』が人々の心に響くのか?
現代社会は、情報過多で常に時間に追われ、ストレスの多い生活を送りがちです。
そんな中で、『めがね』が描くスローライフは、多くの人々にとって憧れの的となっています。
携帯電話の電波が届かない場所で、美味しい食事を楽しみ、穏やかな人間関係の中で過ごす時間。
それは、デジタルデトックスや心の平穏を求める現代人のニーズと深く共鳴しています。
また、小林聡美さんをはじめとする俳優陣の、抑制の効いた演技もこの映画の大きな魅力です。
過剰な感情表現を排し、さりげない仕草や表情で登場人物の心情を表現することで、
観る者は彼らの生活に、より深く没入することができます。
彼らの存在そのものが、映画の世界観を形作っているのです。
『めがね』は、劇的な事件が起こるわけでも、手に汗握るサスペンスがあるわけでもありません。
しかし、その静けさの中にこそ、現代人が忘れかけている「心のゆとり」や「時間の豊かさ」が詰まっています。
日々の忙しさから少し離れて、自分自身を見つめ直したい時、この映画はきっと、穏やかな光を投げかけてくれるはずです。
繰り返しになりますが、この映画は、私たちに「こう生きるべきだ」と説くものではありません。
ただ、そこに存在するゆるやかな時間を提示し、観る者自身が「どんな生き方をしたいか」を考えるきっかけを与えてくれます。
それが、『めがね』が持つ、最も大きな魅力の一つだと言えるでしょう。
映画『めがね』で、あなたも癒しのひとときを
『めがね』は、観る者の心に静かに寄り添い、日々の疲れを癒してくれる、そんな特別な映画です。
小林聡美さんの自然体な演技、荻上直子監督の繊細な演出、
そして与論島の美しい風景が織りなす世界は、一度観たら忘れられない感動を与えてくれます。
もし、あなたが日々の生活に疲れていたり、心の平穏を求めていたりするなら、ぜひこの映画を観てみてください。
きっと、スローライフ願望が満たされ、心安らぐ時間を見つけることができるでしょう。
都会の喧騒から離れ、南の島で過ごすような感覚で、この映画の世界に浸ってみることをおすすめします。
この機会に、『めがね【邦画 DVD】』をご覧になってみてはいかがでしょうか。
レビューの評価も人気も非常に高い商品です。あなたの日常に、穏やかな癒しと新たな視点をもたらしてくれることでしょう。
夏だ♪ビーチだ♪鶏肉ときゅうりのココナッツミルク煮
by はなはな桜

材料(3~4人分)
鶏肉(今回は胸肉) / 約300g
きゅうり / 200~250g
ココナッツミルク / 400ml
オリーブオイル / 大さじ1/2~1
塩 / 約小さじ1
粗挽きの黒こしょう / 少々
パセリ(なくても) / 適宜
レシピを考えた人のコメント
気分だけでも、南の島でバカンス~♪淡白な味の鶏肉ときゅうりが濃厚なココナッツミルクとよく合って、とっても美味しい~~♪
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